2007年2月、父から電話があった。
「健一、おしっこが茶色いんだけど…」
いつも、体調が悪いと些細な事でも医師である僕に電話をかけてくる父。
この日もいつも大げさに言う父の事だからそこまで真剣にとらえず、
「とりあえず血液検査をしてもらって」と、軽い気持ちで電話を切った。
それから数日後、黄疸の数値が上がってるからすぐ精密検査をしてもらってくださいと、近くのクリニックから電話があったと連絡がきた。
この時も、まさか父が膵がんに侵されているとは微塵にも思わなかったが、念のため、エコー、CTなど精密検査のできる病院への受診を勧めた。
「膵がんの可能性が高いから入院することになった・・・」と、父から連絡を受けた時は絶句し、かける言葉が見つからなかった。
第一の後悔
これまで胃カメラ、大腸カメラ、血液検査はしていたが、膵臓に関しては全く検査をしていなかった。今考えれば、脂っこい肉が大好きで、肥満傾向にあったため膵がんのリスクはあることから、絶対に検査をしておかなければいけないと思うが、まさか自分の父が膵がんになるなんて思ってもいなかった。
第二の後悔
手術当日
父は、発見されたとき膵がんのステージⅢくらいで何とか手術できると言われたが、手術が始まり、しばらくすると執刀医から呼ばれ、「お腹を開けてみたら予想より進行しており、このまま何もせずにお腹を閉じることもできるがどうしますか?」と言われた。
僕は父なら何もせずに諦めることはせず、必ず勝負するだろうと考え、「このまま手術を続けてください」と、お願いした。
手術は成功したが、その後2年半の闘病生活の末、2009年9月25日に亡くなった。
癌による闘病生活はここで書くことはできないほど壮絶であり、術後は1度も人間らしい生活を送れなかったように思います。 果たしてあの時、手術を中止し、抗がん剤などの治療をしていたらどうだっただろうか? 今でもあの判断が本当に正しかったのか?11年経った今でも答えは見つからないです。
家族が癌になるという事
本人だけでなく、周りの人たちすべての生活が一変します。 もちろん本人が一番苦しいのですが、同じくらい周りの人も苦しいです。
まさか、自分が癌になるわけがない。
この考えを変えてほしいです。
絶対に自分は癌になるはずだと。
国民の2人に1人は癌になる時代に、自分が癌になるわけがないなんてありえないのです。
癌の部位にもよりますが、胃がん、大腸がんは内視鏡さえやっていれば、たとえ癌になっても早期発見できるため命を落とすことはほとんどありません。
それに加え、当院では膵がんに対しても他院と提携し早期発見できるよう膵がんドックも行っています。
自分のところに来てくださる患者さんには、絶対に胃がん、大腸がん、膵がんで死なせたくはありません。
少しでも胃腸に不安のある方や膵がんのリスクのある人(家族に膵臓癌に罹患した人がいる糖尿病、慢性膵炎、膵嚢胞がある、肥満、喫煙者、大量飲酒者など)はぜひ当院で検査を受けてください。
宜しくお願い致します。